台湾系アメリカ人フォトグラファーでスケートボーダー、ジェリー・スー(Jerry Hsu)の作品集。
2011年以降にロサンゼルスで作者が撮影した写真を収録する本書は、都市そのものがあたかも意思を宿した存在であるかのような気配を映し出す写真集である。
作品は、この街に内在する矛盾へと繊細に目を向け、希望と絶望、美しさと痛みを想起させるイメージを、不穏で詩的なシークエンスとして編み上げている。歪んだフェンスや傷ついた身体の痕跡とともに、捨てられた便器、血痕の残るマットレス、衝突事故を起こした車、そして不気味な炎に包まれる銀行といった偶然の情景が織り交ぜられる。ポートレートは、荒廃と暴力性を抱えた都市環境のなかで、被写体との親密な関係を静かに築こうとする。
一見するとばらばらで不協和音のようにも思えるこれらの断片は、やがて人を惹きつけるひとつの調和へと収斂していく。そして、破壊を終わりではなく、変化と再生をもたらす可能性として見つめ直している。